半導体デバイスの「逆問題」をミリ秒で解く手法を開発 ー 多値性を持つパラメータ空間でも、物性値を高精度に逆推定 ー(神谷利夫教授、井手啓介助教)
東京科学大学(Science Tokyo)総合研究院 元素戦略MDX研究センターの木村公俊大学院生(当時)、井手啓介助教、神谷利夫教授らの研究グループは、横浜市立大学大学院生命医科学研究科の寺山慧研究教授、台湾国立中山大学 Kuan-Ju Zhou(クアンジュー・ショウ)氏らと共同で、半導体デバイスの逆問題[用語1]を1ミリ秒未満で高精度に解く新しい機械学習手法を開発しました。
半導体デバイスの研究開発では、測定したトランジスタの特性から、使われた材料の物性値を推定する「逆問題」の解決が、デバイス改良の方向性を決める鍵となります。その高速化に向けて機械学習の活用が期待を集めていますが、半導体逆問題には「多値性[用語2]」、すなわち1つの問題に対して異なる複数の解が存在するという本質的な難しさがあり、これがニューラルネット(AI)の学習を著しく困難にしてきました。
本研究では、順方向AI(物性からトランジスタ性能を推定)と逆方向AI(トランジスタ性能から物性値を推定)をタンデムに連結し、逆方向AIが推定した物性値を順方向AIに通して元のトランジスタ特性を復元できるかを自分自身に問わせることで、この学習の難しさを克服しました。その結果、従来研究の約1,000倍広い物性パラメータ範囲においても、多値性に起因するばらつきを抑えながら1ミリ秒未満で高精度に逆推定できることを示しました。さらに、学習範囲の広さによって、不良デバイスの解析にもそのまま適用できる高い汎用性を実験によって実証しました。本成果は、AIが自動で実験を進める自律研究システムへの応用や、工場で半導体の品質を瞬時にチェックし製造プロセスへの物性値フィードバックをも可能にするものです。また、半導体に限らず多値性を伴うさまざまな逆問題への応用も期待されます。

| プレスリリース詳細 | Science Tokyo ニュース |
| 掲載紙 | 2026年5月27日付(現地時間)「Advanced Intelligent Systems」(Wiley) |
| タイトル | Tandem neural network rapidly solves multivalued inverse problems: application to oxide-semiconductor characterization 和訳:タンデム型ニューラルネットワークによる多値性逆問題の高速解法 — 酸化物半導体の物性解析への応用 — |
| 著者 | Masatoshi Kimura(木村公俊), Keisuke Ide(井手啓介), Kuan-Ju Zhou(周冠儒), Atsushi Shimizu(清水篤), Takayoshi Katase(片瀬貴義), Hidenori Hiramatsu(平松秀典), Kei Terayama(寺山慧), Hideo Hosono(細野秀雄), Toshio Kamiya(神谷利夫) |
| DOI | 10.1002/aisy.70437 |