抗体の地図を描く:NMRで明らかにする抗体のFc領域の構造の秘密 ー 非標識NMRによる高次構造評価の新戦略、抗体医薬の品質管理に革新 ー (谷中冴子准教授)
東京科学大学 総合研究院 フロンティア材料研究所の谷中冴子准教授は、自然科学研究機構 生命創成探究センター/分子科学研究所、名古屋市立大学大学院薬学研究科の研究チームと共同で、ヒトIgG1抗体のFc領域[用語2]に存在するメチル基を部位特異的に割り当てるNMR解析法を確立しました。この手法により、抗体の構造を座標化し、原子レベルで「地図」として描くことが可能となりました。さらに、糖鎖構造の違いに起因する微細な変化を非標識状態で検出できることを示しました。具体的には、フコースの有無やガラクトース末端構造の差異がスペクトルに反映されることを確認し、これらの特徴が製剤化抗体や市販抗体にも適用可能であることを実証しました。加えて、動的フィルタリング法を用いることで、ヒンジ領域や受容体結合部位における柔軟性を選択的に評価し、抗体の機能に直結する領域の動態を明らかにしました。これらの成果は、抗体医薬の品質評価や設計開発における新たな指標を提供するものです。
本研究は、2026年2月11日(現地時間)に国際学術誌「Journal of the American Chemical Society」にオンライン公開されました。
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掲載誌 : Journal of the American Chemical Society
論文タイトル : Unlabeled NMR Approach with Site-Specific Methyl Assignments for Structural Evaluation of the IgG1 Fc Region
著者 : Saeko Yanaka*, Yuuki Koseki, Yohei Miyanoiri, Toshio Yamazaki, Tsutomu Terauchi, Daichi Kaneko, Yukiko Isono, Kohei Tomita, Sachiko Kondo, Masayoshi Onitsuka, Maho Yagi-Utsumi, Hirokazu Yagi, Akiko Ishii-Watabe, Koichi Kato*(* 責任著者)
DOI: 10.1021/jacs.5c18997