シリコンに注入した水素が自由電子を生成するメカニズムを世界で初めて解明 ー シリコンパワー半導体の電子濃度制御を高度化し、電力損失低減に貢献 ー(松下雄一郎特任准教授)

東京科学大学(Science Tokyo)総合研究院 フロンティア材料研究所の松下 雄一郎特任准教授、三菱電機株式会社(以下、三菱電機)、筑波大学 数理物質系の梅田享英准教授、株式会社Quemix(キューミックス、以下、Quemix)の4者は、シリコンに注入した水素が特定の欠陥と結合することで自由電子を生成するメカニズムを世界で初めて解明しました。本メカニズムの解明により、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)の電子濃度制御を高度化し、構造設計や製造方法を最適化することが可能となるため、電力損失の低減に貢献できます。また、将来的には、UWBG(Ultra Wide Band Gap)材料を用いたデバイスへの展開が期待できます。

カーボンニュートラル社会の実現に向けて、パワーエレクトロニクス機器の高効率化や省エネルギー化が世界中で活発に進められています。中でもIGBTはそれらの機器を動作させるために不可欠な電力変換を担うキーデバイスであり、その変換効率の向上が課題となっています。IGBTでは、水素イオンをシリコンに注入して電子濃度を制御する技術が実用化されていますが、この現象は約半世紀前に発見されたにもかかわらず、その原理は長らく解明されていませんでした。

三菱電機と筑波大学は、2023年に共同で、シリコン中の電子濃度の増加に寄与している複合欠陥[用語6]を発見し、それが格子間シリコン対と水素の結合により形成されることを明らかにしましたが、その過程で自由電子が新たに生成する理由は不明でした[用語7]。4者は今回、この複合欠陥に着目し、第一原理計算[用語8]などを行い、複合欠陥中で水素がどのように存在するかを明らかにしました。また、この複合欠陥から自由電子が生成していることを裏付ける理論として、水素が電子を放出する理由や、電子がシリコン中で自由電子となるメカニズムも解明しました。さらに、本理論の拡張により、将来のパワーデバイス用材料として期待されていながら、電子濃度制御が非常に困難なダイヤモンドに当該メカニズムを適用できる可能性を示しました。 

なお、本成果の詳細は、ネイチャー(Nature)出版社が運営する学術誌のCommunications Materials 誌(2026年1月13日(ロンドン時間)にオンライン公開)で発表しました。 

詳細は、Science Tokyoニュースをご覧ください。 

 

掲載誌 : Communications Materials
論文タイトル : Advancing N-type doping in semiconductors through hydrogen-defect interactions
著者 : 清井明、西谷侑将、松下雄一郎、梅田享英
DOI: 10.1038/s43246-025-00955-4

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